滞在4日目 コーチングクリニック&準決勝

 

コーチングクリニック2日目がスタートしました。この日は3つのクリニックが行われます。

元リトアニア代表HCのKestutis Kemzura氏、2人目のMarian Jelinek氏はアイスホッケーの世界選手権を制したコーチです。

 

そして本日の3人目にはユーロリーグ8度の優勝、ユーゴスラビアを率いて世界選手権、ヨーロッパ選手権も制したZeljko Obradovic氏がスピーカーとしていよいよ登場します。

 

コーチングクリニックの様子はFIBAのウェブサイトにも公開されています。

 

クリニック2日目の朝、とてもラッキーなことがありました。

それはクリニックスピーカーのKestutis Kemzura氏と対談をすることができたのです。対談と言っても、車の中で20分ほどお話できただけなのですが…。それでも相当幸運なことでした。

 

クリニックのスピーカーは全員FIBAが用意する車でホテルからクリニック会場まで移動します。その日の朝は、諸々の事情が重なり、その車に自分が一人便乗させてもらえることになりました。隣に元リトアニア代表コーチが座っているのでかなり緊張したのですが、こんなチャンスは二度とないと思い、質問をしてみたところ、とても丁寧に答えてくれました。


質問の内容はズバリ「なぜ人口が300万人満たないリトアニアが、これほどまでに強いバスケットボールチームを作れるのか?」です。本当にいろいろなことを教えてくれましたが、最終的には「リトアニア人にはバスケットボールの血が流れている。」ということで結論づけられました(^0^;)

 

『バスケの血が流れている…』

 

そんな言葉聞いたことがないし、イメージもしたことがなかったので、リトアニア人とバスケットボールの関り合いの深さを感じた瞬間でした。

そんなKemzura氏のクリニックテーマは

 

『 Secondary Break, Transision Offense 』

 

セカンダリーブレイクとトランジションオフェンスです。

数多くあるセカンダリーブレイクのなかで、Kemzura氏がお勧めするパターンを紹介してくれました。

 

Kemzura氏のお勧めするセカンダリーブレイクは、連続するバックカットなどを利用したもので、非常に興味深かったです。

 

次のスピーカーはアイスホッケーのコーチとして世界選手権を制した経験のあるMarian Jelinek氏の講義です。彼の担当した分野は、もちろんバスケットボールではなく、メンタルについてでした。

 

講義のテーマは

 

『 Mental Training, Theory and Practice 』

 

メンタルトレーニングの理論と実践といったところでしょうか?

基本的な内容は、日本でも広く提唱されている「フロー理論」の話でした。選手のモチベーションを高める為にコーチとしてどのようなアプローチができるのかという概論的な話でした。

 

しかしこの講義、恐らくですが同時通訳している方がフロー理論などを初めて知った方のようで、英語の通訳がかなり分かり辛く、講義全体が非常に難解でした…。

 

そして、いよいよこの日の真打ち登場です。

クリニック会場に集まった250名のコーチ陣全員が、生きた伝説でもある

Obradovic氏のクリニックをいまか、いまかと待ち望んでいるのが、会場の雰囲気で伝わってくるようでした。もちろん自分もその雰囲気を醸し出している一人でした。

 

Obradovic氏のクリニックテーマは

 

『 Offense against Match Up Zone 』

 

マッチアップゾーンに対するオフェンスです。

どんな難解なものになるかと思いきや、スピーカーから発せられた最初の言葉は「今日は3つのことだけをご紹介します。」でした。

 

たった3つのこと。

 

しかも、どんなゾーンディフェンスにも、むしろマンツーマンディフェンスにでも、マッチアップゾーンに対してでも応用のきくオフェンスシステムということでした。

 

デモンストレーターの選手たちにオフェンスのやり方を説明しながら、ベースとなる形を紹介してくれました。始めにまずはマンツーマンディフェンスを相手にそのシステムを披露し、それで上手く攻めれると次はゾーンディフェンス、マッチアップゾーンとディフェンスの形態を変えていったのですが、確かにどのパターンのディフェンスにも応用ができていました。

 

形としてはトップからウィングにエントリーしたあとはある程度決まったカッティングとスクリーンを使ったシンプルなものです。しかしそれを効果的に遂行するためには高い状況判断能力とテクニックは間違いなく必要だろうと感じました。

 

Obradovic氏が指揮するチームはヨーロッパでもトップレベルの選手が集まるチームですので、このシステムを遂行するだけのスキルと判断力を有していると思います。ですからこのシステムだけを真似たとしても、それを扱う選手の技能が不足していれば、結局は上手く攻められないとも感じたクリニックでした。

また各クリニックの終わりには当然、質疑応答の時間も設けられています。Obradovic氏にも多くのコーチが手を挙げ質問をしていました。

もちろん自分もこんなチャンスはないと思い、思い切って手をあげたところ、何と指名してもらえました!

 

私が質問したことは

 

水野:「数多くの素晴らしいコーチが居る中で、何があなたをそれ以上の偉大なコーチにさせたのですか?」

 

Obradovic氏:「全ては選手たちのお陰です!」

 

本当にシンプルな一言。

しかし謙虚であるけど奥深い一言でした。

 

その後もコーチたちがいろいろ質問をするのですが、それらにも明快かつシンプルに答えていました。

 

最後は両腕を大きくひろげ「It's Simple!!」と言っていたObradovic氏の後ろ姿が印象的なクリニックでした!

 

この日は3名のスピーカーによるクリニックでしたが、夢の時間はあっという間に過ぎ去ってしまいました。そして休む間もなくO2アリーナへ移動し、順位決定戦とその後に行われる準決勝を観戦します。

 

準決勝の前に行われる順位決定戦ではスペイン対クロアチア、カナダ対中国の試合も観戦。スペイン対クロアチアの試合では前日の敗戦を引きずっているのかクロアチアの元気がなく、スペインが危なげなく勝利。

 

続くカナダ対中国の試合は逆に順位決定戦ではあるものの大熱戦。私も人生で初めて生でトリプルオーバータイムの試合を観戦しました。最後はカナダが勝利を収めましたが、両者まったく譲らない好ゲームでした!!

続いて、いよいよ準決勝の第一試合、セルビア対オーストラリア。

セルビアはクロアチアとの死闘を制し、オーストラリアはスペインを撃破し、両チームともモチベーションの高い中、決勝を目指して戦いました。

 

試合の立ち上がりはオーストラリアが主導権を握る展開でしたが、徐々にセルビアもリズムを取り戻し、試合は接戦へ。最後はセルビアが逃げ切り勝利、決勝へ駒を進めました。

続く準決勝第2試合、アメリカ対リトアニアはアメリカが1Qからフルコートプレスを仕掛けてリードを広げます。リトアニアはフルコートプレスを突破することに力を使い、ハーフコートバスケットが思うように作れていませんでした。結局は40点もの差をつけアメリカが決勝進出を果たしました。